tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

雇用・賃金構造正常化の兆しか

2016年04月08日 22時25分49秒 | 労働
雇用・賃金構造正常化の兆しか
 円高傾向と株価の低迷で、何となく気持ちの晴れないこのところの日本経済ですが、企業の採用・求人の意欲は強く、この辺りが日本経済の底力を示しているのかなと考えたい状況が続いています。

 こうした中で、最近、雇用構造、賃金構造に何となく変化の動きが出始めているようなニュースがあり、日本経済・社会は望ましい方向に改めて進み始めるのではないかと期待しています。
 
 その1つは、非正規従業員の増加に歯止めがかかった様子が見られることです。
 もう1つは、賃金構造で中小企業の底上げの様相が見られることです。

 先ず雇用構造についてみますと、総務省の「労働力調査」2014年と2015年の非正規労働者の割合が、37.4%と同じで、最新の今年2月も37.6と前年同月と同じ、今後を見ないとわかりませんが、何となく、非正規雇用の増加に歯止めがかかったように感じられます。

 また、非正規の中でも、正規を望みながら非正規で働いているという、いわゆる「不本意非正規」については、昨年11月発表の厚労省の「就業形態調査」で、非正規の中の18.1%で前年調査より4.4%減ったという数字があります。

 それぞれ統計によって、調査項目の定義が違いますから、絶対水準は統計によって違いますが、傾向値としてみれば、変化の趨勢を反映するのではないでしょうか。

 賃金構造につては、いまだ今春闘の結果が政府統計に反映される段階ではありませんが、春闘の賃上げ状況の速報などを見ますと、金属労協などをはじめ、中小企業の健闘が目立つようで、ベースアップの平均回答額が、大企業1,122円、中堅企業1,128円、小規模1,281円といった数字も発表されています。

 中堅中小の場合は基準とする賃金の水準が大企業より低いですから、上昇率では、超小規模が大企業をかなり上回ることになるのでしょう。
連合の発表では、非正規の賃上げが2.22%と正規従業員の2.02%(定期昇給込みの賃上げ総額)を上回るとものなっています。

 賃上げについては、今春闘では連合が、主要企業のベースアップを自主的に小幅にし、その分、下請けを含めたサプライチェーン全体に賃上げを行き渡らせたいという極めて賢明かつ合理的な格差社会化の阻止を旗印に掲げました。このブログでも大いに評価させていただいたところです。

 日本政府も財界・経営者も、極めて短期的視点での政権の人気取りや当面の利益拡大策にばかり心を砕くのではなく、長期的視点で、日本経済社会のバランスのとれた発展に貢献するような具体的な政策を推進してほしいものです。

 幸い、雇用情勢の展開が、人手不足基調を強め、結果的に上述のような統計数字の変化も見られます。しかしまだ、短期的なコスト削減、当面の利益確保を重視する企業が多いこともこうした数字の中身の分析からも知られます。

 特に企業経営者の皆様には、連合の心根も理解し、環境条件に強いられてではなく、この重要な時期にこそ、より良き日本経済社会創造のために、人間中心の経営、人を育てる経営という日本的経営の本来の在り方に根差した、雇用・賃金構造の担い手としての重要な役割を自覚してほしいものです。

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